県立中央病院看護師長/21世紀研修モデル

<未来教育コンピテンシー実践手法>
  〜目標マネージメント&ポートフォリオ評価&コーチングの実践能力を高める〜

21世紀は変化と情報の時代だ。そこではすべてがダイナミックに変化している。看護師研修においても目標マネージメント、成長につながる評価等、新しい概念や手法を自分のものとする必要がある。
ここに応える<未来教育コンピテンシー実践手法>を導入した21世紀型研修実践をご紹介する。その特徴としては、まず<未来教育プロジェクト学習やポートフォリオ評価>の理論の基本理解を得た上で、その後<実践 ワークショップ>を実際に行うことで、看護師の「資質向上」「自己研鑽」「目標経営」「人材育成」等の概念や手法を体験的に得るものである。

ここから実際に行われた看護師長研修の実践をご紹介するものである。

実践日時:16年9月 PM 1:00〜5:00

研  修:島根県立中央病院看護師長研修

主  催:看護師長研究会

設計&講師&コーチング:鈴木 敏恵
                   島根県立看護短大客員教授 
                   未来教育デザイナー/一級建築士


研修参加者:島根県立中央病院看護師長約20名 / 研修支援者:若槻徹

1:00 〜  理論 基本理解 

1:00〜「今日の目標」と「今日の流れ」の確認                                                      

今日の目標:「人材育成につながる{目標管理シート}の活用法をつかむ!」

今日の展開:1:00〜2:00 理論
         「ポートフォリオとは何か」「目標達成手法プロジェクト」「対話コーチング」

       2:00〜4:00 ワークショップ実践
         「準備」「テーマ・ゴール」「計画」「情報」「制作」「プレゼンテーション」「再構築」

       4:00〜5:00 実践ポイント
         「資質向上を実現するコンピテンシー手法設計」の説明

1:05〜 ■ポートフォリオとは何かをつかむ!                                                      
   ・ 紙ばさみ---情報の一元化---価値が見えてくる

・ 中身----自分の成果+手に入れた情報

・ これまで評価=結果から(?) ポートフォリオ評価=プロセス(+)

・ 効果=数値化できない能力、センス、個性、生き方が見えてくる

・ 三つの活用=「仕事」「評価」「再構築」

・ 「再構築」=元ポートフォリオから凝縮ポートフォリオ

・ 3つの種類=パーソナルポートフォリオ・テーマポートフォリオ

1:30〜 ■未来教育プロジェクト学習(目標達成手法)                                                
    ・ プロジェクトとは何か

    ・ 3つの成功の秘訣

     ・ プロジェクト基本フェーズ

 2:00 〜  実践 ワークショップ 開始

【基本フェーズ】

未来教育プロジェクト学習は、以下のような基本フェーズで進行します。

[準備] →[ ビジョン・ゴール] → [計画] → [制作] → [情報リサーチ] → [ 再構築] → [成長エントリー]

【ビジョンとゴール】

未来教育プロジェクト学習は、学習者自身が意志をもち「何のために、何をやり遂げたいのか」を明確にしてからスタートする必要があります。以下のビジョン(何のために)とゴール(何をやり遂げたいのか)を決め開始。学習者は基本フェーズに添いながら、『研修改善のアイディア集をつくる!』というゴールへ向かいます。

  ビジョン『新人看護師の研修をよりよいものにしよう』

  ゴール『研修改善のアイディア集をつくる!』

【内容】

『新人看護師の研修をよりよいものにしよう』というビジョンのもと、同じ関心を持つ人が集まり、チームを結成します。そのチームメンバーで話し合い「チームテーマ」を考え文章化します。

そのために模造紙を広げ、チームメンバーでどんどん話し合い、その中の言葉(キーワード)をすぐに書きとめる。そのことで考えがどんどん発展します。キーワードを書くことは、互いの思考を視覚化させ共有を可能とさせます。そこで価値あるキーワードをつなげ、チームテーマの文章ができあがるのです。

作業後にチームごとに模造紙を披露しあい参加者全員で提案を共有します。

ここで曖昧な目標を具体的な目標にするため、対話コーチングを鈴木敏恵が行った。


詳しくは、「看護展望 2005年1月臨時増刊号」参照。
http://web.infoweb.ne.jp/medical-friend/magazine/k-tenbou/te2005/te-0501z.htm
 




4:00〜 <資質向上を実現するコンピテンシー手法設計>の説明                                    以下の資料Aと「目標管理シート」を組み合わせながら説明

資料A 

(1)人材育成つながる評価手法:コンピテンシー(Competency)

◆コンピテンシーとは

◆コンピテンシーを評価手法に取り入れるポイント

◆コンピテンシー評価の視点

        ◆コンピテンシー評価の前提 (ポートフォリオの有効性)

(2)看護師との間でコンセンサス得ておきたいこと

(3)看護師の「目標」や「自己評価」に対しての考え方

◆「評価」への基本姿勢 

◆「目標や自己評価」などへ評価の視点 

◆「目標」を戦略に変える!

◆看護師からみた「目標」から「評価」への手順  」に対しての考え方

◆「目標」をどう評価するのか?   

◆「目標」設定のポイント

◆「明確な目標」となるコーチング 




(4)「看護師ポートフォリオ」導入プラン

◆「目標」を提出するまでの事前準備

◆「目標」をより具体的にする、対話コーチングの手法

◆「自己評価」をどう評価するか? 

◆成長につながる自己評価の鍵  

◆評価するときの心構え 

◆フェアな評価であるために 

(5)「看護師ポートフォリオ」を導入する価値の説明
(看護師の合意を得る)

(6)「看護師ポートフォリオ」の中身の説明

(7)「看護師ポートフォリオ作成」の方法説明

 4:50 まとめ                                                                

◆未来教育コンピテンシー手法設計

未来教育プロジェクト学習には、コンピテンシーを発揮できる仕組みがたくみに織り込まれている。そのわかりやすいのが、プロジェクト学習の「ゴール」に『成果』という目に見えるものを生み出すこと。またプロジェクト学習の基本フェーズの後半には、[制作]  [プレゼンテーション]  [再構築]  [成長エントリー]という様々なアウトカムを生む場面が仕組まれている。

◆未来教育プロジェクト学習は「事実」「行動」「プロセス」に価値をおく!

未来教育プロジェクト学習は「事実」や「行動」に価値をおいている。それは、現実から手に入れた「知識・情報」や「身につけた力」を活かし「具体的な行動と積極的にして「成果」を生むことという設計手法でなりたっている。そしてその成長を見いだす評価は数値による結果への評価ではなく「プロセス重視」である。それを<ポートフォリオ>が叶える。

[提案] 未来教育コンピテンシー

 〜「目標シート」と「ポートフォリオ」を併用しよう!〜

各病院で、「目標シート」が活用されつつある。この「目標シート」をもとに、看護師長と看護スタッフ間で面談が行われ資質向上や評価に活かされている。しかし、どんなによく出来たシートでも、これだけでは目標設定の動機やそのための努力や自己評価のエビデンス(根拠)などは十分に伝わらない。ここに仕事や自己研鑽の軌跡が入っているポートフォリオを活かすことを提案したい。

「目標シート」と「ポートフォリオ」の両方を面談時に広げることで、より人間的な雰囲気となり、互いの理解に役立つ、人間的な豊かな関係は、看護師スタッフを資質向上ばかりでなく、日常の病棟業務の円滑やリスク回避にも有効だ。また例えば看護師スタッフが研修を受けたいと申し出た時、これまでの自己研鑽歴のポートフォリオを提示すれば納得してokをだせるだろう。





 4:00 終了                                                              
【参加した看護師長の感想】

「プラスの評価を与えていくこと、そして、結果のみではなくそのプロセスを評価することが大切だということに気づいた。」

「ポ−トフォリオを用いて面談を行うことで、プラスの評価につながり、結果ではなくそのプロセスに注目することができると思った。」

「是非自分のポ−トフォリオを作ってみたい。結果がすべてと言われて残念でたまらなかったので、プロセスを大事にするということを久々に聞き努力が報われた気がした。」

「元ポ−トフォリオから凝縮ポ−トフォリオを作ること(再構築)はエネルギ−を必要とするけれど、より成長し価値あるものにするためには大切だと思う。」

「使えそう!目標管理は自分のなかでも難しく挑戦中の課題である。スタッフの目標を共有することが大切とあらためて気づいた。スタッフと共に目標を立てていたのだが、アドバイスの仕方が悪く結局提出された目標はお決まりの文章であった。この研修で得たことを自分の指導とかコ−チングの仕方を振返り、今後実行してみる。」

「評価することは価値を見出すことという言葉が印象的であった。スタッフ一人一人をそういう視点で育てていけたらとの原点に返った。プロジェクト学習・ポ−トフォリオを是非全員のスタッフにやってほしいと思う。即実践1!看護の領域に意志ある学びを初発信!!」

参考:

◆執筆『看護展望』2005年1月<臨時増刊号> 鈴木敏恵 
◆新連載『看護展望』2005年1月号〜12月号執筆  鈴木敏恵 
◆新刊『成功する臨床研修〜秘訣はポートフォリオ評価と対話コーチング〜」    著:鈴木敏恵  出版:医学書院 (2005年 春発行予定)
◆新刊『未来教育コンピテンシー(仮)』著:鈴木敏恵(来春発行)

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