ポートフォリオで医学教育革命-1
 〜 とびっきりの笑顔の研修医 〜


                 未来教育デザイナー 鈴木敏恵
                 s-toshie@ca2.so-net.ne.jp

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 2004年から医師の臨床研修が「必須」となります。この期間で「確かな成長とその評価」ここが重要です。そこで日本の医学界でいまブレーク寸前なのが「ポートフォリオ」の存在です。 医学教育の世界最高峰英国のダンディー大学では、すでにこのポートフォリオ評価が重要な卒業承認として役割を果たしています。
   世界の医学教育の流れはポートフォリオ評価の時代へ
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2003dir/n2530dir/n2530_03.htm
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     医学教育もポートフォリオの時代へ 
         新しい扉

 鈴木敏恵と医学未来教育プロジェクトメンバーが生みだした 医学ポートフォリオの「知の成果」を共有できるよう島根の若槻先生にお力をいただきHPを誕生させました。

スマートな研修医とかっこいい指導医の先生方をご紹介しています!   
           ↓
    http://www.igaku-portfolio.net/


日本ではじめての医学界におけるポートフォリオ講演

 いま鈴木敏恵は、出雲の病院にて研修医教育へポートフォリオやプロジェクト学習の指導アドバイスを行っています。 7月10日から11日にかけて島根の病院に於ける医師初期研修見学による評価とアドバイス、そして7月12日に、「医師研修におけるポートフォリオ活用の可能性と手法」というテーマで医師、研修医、看護師、医学生の方々へ講演をさせていただきました。日本ではじめての医学界におけるポートフォリオ講演となりました。


研修医の仕事を知りたくて・・・

 私は7月10日から11日と研修医の方と一緒に過ごさせていただきました。その日常における、知の共有、知の産物などを掴みたくおもいました。また研修医を育てる病院のシステムも勉強したいとおもいました。わたしは研修医の方のお仕事や様子を知るために研修期間にある医師のそばにピッタリいることにしました。
 
 ご一緒させていただいたのはF先生。F先生はこの3月からこの病院で研修期間をスタートされた、笑顔のすてきな研修医。とっても親切な方です。外見は・・髪はほんの少し茶色の髪、以前のベッカムほどではありませんが短めの髪の毛はツンと上に立っています、いまふうのスマートな若者って感じ、シャンと姿勢もまっすぐで、よく通る声で、明瞭に話し、人の話も丁寧に耳を澄ます、ほんとうにすてきな方です。


キュートなチックのカーテンの病室

 時間があれば、ご自分の担当されている患者さんの様子を見にいかれるF先生。私も一緒についていきます。病室へ向かう途中もいろいろ親切に教えてくださいます。またすれ違う患者さんやナースの方とも言葉を交わしあいながら歩きます。
 そのすぐそばに添いながら、F先生の動作や言葉の一つひとつに耳を澄まし、ノートとペンを持ち、なんでも吸収しようとする私がいます。F先生の見ているもの、私も目で追います。さあ患者さんの病室に到着。

 この病院は新築で建物もなかなかステキです。病室も日常生活がなるべく送りやすいよう、さりげなく工夫されています。例えば普通病院と言えば、アイボリー色がおきまりの病室のカーテンですが、この病院では違います。5月をイメージしたようなさわやかでキュートなチックのカーテンです。それだけでも病室はグッとあかるい雰囲気です、いいです。


とびっきりの笑顔の研修医

 あかるいチックカーテンの向こうにF先生が担当されているT患者さんは横になっています。Tさんは93才、ご高齢の患者さんです。背筋をしゃんと伸ばしたF先生がベットサイドに近寄ります。声をかけます。 声を掛けるまえに、ご自分の身体をぐっと曲げます、うまくご自分で動けない患者のTさんのそばになるべく近づき、Tさんの視野角の中に入ろうとされます。

 Tさんの顔の真ん前に自分の顔をもっていき、おもいっきりやさしい笑顔を広げます。そしてしっかりTさんの目をみて、瞳をのぞき込むようにして、Tさんの瞳がご自分を捉えたことを確認してから、明瞭な声で患者さんへ話しかけます。とびっきりの笑顔で話しかけます。見ている私もニッコリにさそわれニッコリしちゃいます。


「せんせい、みると安心します・・・」

F研修医「Tさん、具合はどうですか? だんだん顔色がよくなりましたね、」とやや大きめの声でいう。

T患者:(ジーっとF先生の顔みてる)

F研修医「どうですか?どこかせっつい(せっつい:出雲弁、痛いという意味)ところないですか?」

T患者「(ジーっとF先生の顔みながら)ない。だんだんよくなりました-」

F研修医「そうですか、よかったですね。(とまたニッコリ)」「脈、はからせていただきますね、左手さわらせてもらいますねー」といいパ
ルスなんとかという機械を使う、血液酸素量と脈が分かる機器。計器を患者さんの指につける。それをしながら話しかける。

F研修医「ご飯はおいしいですか-?」

T患者「・・・まあまあ」(耳をすませないと聞こえない小さな声)

F先生「足見せていただきますね-」と言いながら足の浮腫の具合をみる。

F研修医「大丈夫ですね、いいですね。おしっこも出るし、あんまりもう心配することないですよ-。」(耳を澄まし患者さんの言葉をまつ。)

T患者(じっーとみて)「せんせい、みると安心します---・・」

F研修医(一層の笑み)「うふふ、そういわれるとうれしいです、しょっちゅうきますね。ご飯はどうですか?なるべく動いたほうがいいので、なるべく自分で食べましょうね。」

         .・ ・。・゜☆・゜

 その優しい様子と信頼あふれた眼差しの交わしあいに感動して胸がキュとなる私です。病室をでてナースステーションへ。カルテファイルや処方の確認をなさるF先生。テキパキ仕事をされている看護師さんへ訊ねる。「Tさんの様子どうですか?」。看護婦さんと少し話しあい、その内容を私に説明してくださるF先生。

F研修医「Tさんは、腸を動かす薬をやめたんです、できるかぎり薬に頼らず、便が出たほうがいいから、」

鈴木「じゃ、あの患者さんもうご自分で便がでるのですか?」

F研修医「いいえ」

鈴木「じゃあどうしてるんですか?」

F研修医「看護師さんが指でかきだしてさし上げるんです。」

鈴木「・・・(言葉がない)」


       .・ ・。・゜☆・゜

 患者さんにとって一番いいことはなんだろうと常に真剣に考え、いろいろ考え、できること出来る限りされている研修医、医師、看護師、の方々。私はどれほど価値のあることをこの病院で学んでいるだろうかとおもった。深く感謝しました。来週は「ポートフォリオと笑顔のシニアレジデント」

                 つづく


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