研修医プレゼンテーション

いま私は医学や看護の世界に、<意志ある学び--未来教育>を広げています。奈良や出雲の病院の臨床研修の場で、「プロジェクト思考」「ポートフォリオ戦略」や「一人思考・思考共有」「知の再構築」など「対話コーチング」手法で実施したり、指導医研修などで講演するという日々です。


               鈴木 敏恵  
               s-toshie@ca2.so-net.ne.jp
               http://www02.so-net.ne.jp/~s-toshie/

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┃■「価値ある成長」の確認と評価       ┃
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◆月齢のような若き医師の成長

臨床研修は2年間の間に、救急や外科など7つの研修を重ねていきます。なかでもそのスタート期が大事です。医大生だった若者が医師としてのスタートの月日。その日々の成長は赤ちゃんの月齢のようだと言われています、なぜなら毎日毎日ものすごい勢いで成長するからです。想像してみてください....昨日まで医大学生だった一人の若者が、国家試験に合格した翌日から「医師」として人の命や様々な現実と対座する日々となるのです。


◆「価値ある成長」の確認と評価

濃密な臨床研修期間---刻々と「価値ある成長」を遂げている研修医たち。自己、他者、共にそれをどう確認・評価したらいいでしょうか? 次の研修へ移る前に区切りとしてしっかりと「価値ある成長」の確認と評価の場をもつこと。次々やりっぱなしで時間に追われるのでなく、一回「間」をもうけ「静かに思考する時間」が絶対必要というのが私の考えです。それは、意志ある学び--プロジェクト学習において、活動(各フェーズ)と活用の間に「思考の時間」を設けることと共通する、人間のパフォーマンス向上への有効な戦略でもあります。

【思考の時間】とは↓
http://www.suzukitoshie.net/2001/shikounojikan.html



◆「知の共有」としてのプレゼンテーション

なんといってもオープンな場で、自分の得たものを「人に伝え」「知を共有」することこと以上の成長確認はありません。そこには、病院長、指導医、シニアレジデント、看護師、医学生、患者さん、リハビリや薬剤など多職種の方がいます。これらの人々は多面的に今日まで研修医と仕事を元にしたり身近で一緒に時間を過ごし見てきた人々です。これらの人々の前に立ち、研修医が自らの臨床研修導入期で得た成長や気づきをプレゼンテーションし、互いにシェアする、そういう場をもつことが有効なのです。

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5月、医師国家試験を合格した直後、私は6人の研修医へポートフォリオの講義をしました。そして研修医はこの2カ月間に「元ポートフォリオ」をつくってきました。それを再構築し「凝縮ポートフォリオ」したものを大きな紙で表現し、それをプレゼンテーションに活用することとなります。

【ポートフォリオの再構築】とは↓
http://www.suzukitoshie.net/mpro/pore1.html

2004年6月26日(土)に出雲市民病院で、「これが私たち研修医のポートフォリオです!---知の共有プレゼンテーション!」を開催しました。鈴木敏恵は、その企画プロデュース、そして進行役も今回させていただきました。その様子をご協力いただいた島根県の加茂小学校の若槻先生に報告していただきましょう。

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┃■研修医プレゼンテーション/報告      ┃
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みなさんこんにちは、若槻徹(waka@bs.kkm.ne.jp)です。
鈴木先生にご指導いただきながら、小学校の総合学習で未来教育プロジェクト学習に取り組んで3年目になりました。全国各地での未来教育プロジェクト学習の実践の情報を参考にさせてもらいながら、子どもが真に「考える力」を身に付ける総合学習のあり方を探ってきました。
 また、現在鈴木先生が取り組んでいらっしゃる医療や看護へのポートフォリオを活用したプロジェクト学習の実践の現場の一つが島根県出雲市ということで、ご縁あってその活動にご一緒させていただいています。

先日 鈴木敏恵先生の指導による「研修医プレゼンテーション」に参加しました。未来教育プロジェクト学習の「医学教育/版」に立ち会うことができ、とても有意義な機会を得ました。その概要をみなさんにもお知らせし、“知の共有”を図りたい!そう願いながら、報告します。

医学教育の場でも未来教育プロジェクト学習は有効に働きます!ポートフォリオを活用し、プロジェクト学習の手法を取り入れることで、“意志ある学び”が生まれます。成長し続けようと願う人間味あふれる医師や看護師が育っていく。そのための望ましい研修の姿がそこにはありました。


◆“成長報告会” 〜研修医プレゼンテーション〜

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|<出雲市民病院臨床研修2004>              |
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| これが私たち研修医のポートフォリオです!       |
|      知の共有プレゼンテーション           |
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臨床研修の区切りとして、研修医が学んだことを発表し合う場でした。

今年4月から臨床研修が義務づけられ、医師としての2年間の研修をポートフォリオを用いて取り組む実践を展開中です。プロとして医師の基礎を身につけ,意欲的,誠実に,前向きにやりぬく力をつかむことが目標です。最初の導入期の2ヶ月を終え、自分の得たものを指導医や看護師さん、患者さんなど地域の方の前でプレゼンするという発表会でした。

大学を卒業し、国家試験に合格した医師のたまご(正確にはひよこ?)たちにとっては、社会人としてのスタートで、職場での人間関係にも気を遣い、きっと緊張の毎日なのでしょう。それは、教師の場合にも似ているのでしょうが、命を預かる大切な仕事を毎日こなしていくそのプレッシャーは、もっと大きいと思います。

プレゼンの内容について鈴木先生と相談している研修医さんの姿を見ながら、これまでの大変な2ヶ月を想像していました。これまでの忙しい毎日を振り返り、自分の得たものを他へ共有しようというこのプレゼンは、とても有意義なものでした。

◆ある研修医さんの成長

ある研修医さんに「成長報告書」を見せてもらいました。

◇成長したことベスト3
・患者さんと話しやすくなった
・看護業務の大切さが分かった
・患者さんの問題を考えられるようになった

◇ここから得たことを現実にどう生かしますか
・「これからどんな病院に行っても全ての患者さんや看護師さんに対して活かします。
看護業務についてはもっと勉強して患者様が何かを訴えられたら(体位変換、吸痰など)できることは自分でやれるようになりたいです。」

☆提案
 看護業務もできる医師に!
 医師としてのスキルの向上とともに看護師の仕事も覚えていきたい。
 「車いすへの移動」「体位変換」「吸痰」

この成長報告書は、指導する医師の先生たちや看護師さんからのコメントが記入され、院長さんのコメントや修了の印も押されたものでした。患者さんからのコメントカードも一緒になっていました。

『患者様の事情や思いを尊重しながら医療を進めていく姿勢 先生の優れているところだと思います。涙を見せながらもずいぶんたくましく成長されましたね。OKです。卒業です。(先輩の医師から)』


◆評価は成長へのエネルギー

プレゼンを終えて研修医さんの満足した顔、「いいお医者さんになってください。」と患者さんに言われてうれしそうな顔、プレゼンの模造紙に貼ってもらったコメントカードをうれしそうに眺める顔、成長報告書(通信票)をそっと眺めて、見せ合う姿は子どもと同じ。「セレブレートタイム」で研修期間のスナップやプレゼンの写真が写るスクリーンを見つめるやさしい眼差し。

“人間味あふれる医師になろう!”そう決心した研修医さんたちの顔はみんな輝いて見えました。

評価は成長へのエネルギー。研修医さんだけでなく、研修医さんを支える人たちにとってもこのプレゼンテーションは、自分たちの取り組みの評価につながるものでした。みんなが成長へのエネルギーを得ることができました。

研修医のみなさんが成長する場を直接目にすることができたことは、私にとって有意義な経験でした。

★関連リンク

・鈴木敏恵・研修医ポートフォリオ評価
http://www.igaku-portfolio.net/
 ※今回のプレゼンの様子を近日中にアップします。(私が作っています)

・ポートフォリオを利用した研修医による
「研修の成果プレゼンテーション」
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2003dir/n2563dir/n2563_12.htm#00

・ポートフォリオで変わる医学教育
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2003dir/n2544dir/n2544_01.htm#s

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◆人が成長するとき

 人が成長するは、どんなときでしょう。
・自分で「成長した」と自覚したとき
・人から「成長した」と評価されたとき

他人から認められ、自分で自覚できて、自信がついたときに人は成長します。

「褒める」という行為は、なかなか難しいものですが、認め合うことは勇気を与えます。
他人から理解され、肯定的に認められると(やればできる!)
(自分ってなかなかいいぞ!)という思いが湧いてきます。

※「新通信票」の紹介サイト
梶原編集長さん作成のサイトです。
鈴木敏恵 未来教育ナレッジ全集 プロジェクト学習・ポートフォリオ活用

http://www.suzukitoshie.net/2001/index.html


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